2012年4月28日土曜日

研究活動 - 北海道公立大学法人札幌医科大学医学部神経精神医学教室


神経科学研究チーム

ニュース

  • 2008/12/23 朝日新聞に「再生医療」というタイトルで我々の研究が紹介されました。asashi.comから記事を読むことができます。
  • 2008/12/22 北海道放送(HBC)の「もんすけ医の1BAN」に「アルコールが脳を壊す!?」というタイトルで我々の研究が紹介されました。HBCホームページから動画を見ることができます。
  • 2005/07/07 鵜飼 渉 助手(当時)が "第27回日本生物学的精神医学会・第35回日本神経精神薬理学会 合同年会"で優秀演題賞を受賞しました。
  • 2005/03/04 館農 勝 大学院生(当時)が "25th Conference of Japanese Society for Biomedical Research on Alcohol" で優秀演題賞を受賞しました。
  • 2004/07/23 鵜飼 渉 助手(当時)が "2004 WFSBP Asia-Pacific Congress" でPoster Awardsを受賞しました。

主な研究スタッフ

  • 齋藤 利和 (教授)
  • 橋本 恵理 (准教授)
  • 鵜飼 渉 (講師)
  • 館農 勝 (講師)
  • 吉永 敏弘 (助教)
  • 渡邊 公彦 (大学院生)
  • 渡辺 一平 (大学院生)
  • 白坂 知彦 (大学院生)
  • 金田 博雄 (大学院生)
  • 五十嵐 健史 (大学院生)

脳の神経回路網の修復と再生の機序解明から −新たな診断機器,治療法の提供へ−

神経科学研究チームでは,齋藤 利和教授,橋本 恵理講師のもと,アルコール依存症,うつ病,統合失調症の各脳疾患について,上記の目標を掲げ,病態での脳神経回路網の乱れと,治療による神経回路網の修復・再生に焦点を当て,ヒト死後脳,モデル動物・培養細胞を用いた解明研究を精力的に進めております。得られた結果を長年共同研究者(あるいは仲間)としてお世話になっている多くの先生方に提示させて頂き御教授を得て,治療応用への道を探り,精神疾患の克服に少しでも貢献できるよう日々がんばっております。

Research on Depression

これまで私たちは,うつ病患者死後脳においてcAMPシグナル伝達系の低下を,また,抗うつ薬投与による脳内cAMP系の活性化を報告し,この病態における脳内cAMP-CREB系の重要性を示してきました。細胞内CREBカスケードの変動は,神経栄養因子BDNFをはじめとした種々の重要な蛋白発現を変化させ,神経細胞においてはその生存に,神経幹細胞においてはその生存のみならず,増殖,分化などの各機能に重大な影響を及ぼすことが考えられます。さらにこのことによって誘発された脳神経系の機能異常が,うつ病の病態に結びついているということが推察できます。


不安の組織

私たちはこれまでに,抗うつ薬・気分安定薬を直接細胞に作用させたと きの細胞機能変動を解析する系を構築し評価を進めてきました。うつ病治療においては,それぞれの臨床症状に合わせた抗うつ薬・気分安定薬の選択・処置がなされております。私たちは,各抗うつ薬・気分安定薬の臨床効果発現のメカニズムについて,これらの薬剤の細胞機能変動の解析から考察することが重要と考え,抗うつ薬・気分安定薬の神経細胞の生存,および神経幹細胞の分化機能発現への影響を比較検討するなどして,各治療薬の神経回路網維持機構に及ぼす効果の違いについて詳細な解析を進めています。

Research on Schizophrenia

統合失調症の生物学的病態仮説として,1987年Weinbergerらは神経発達障害仮説を提唱しました。妊娠期や周産期の神経病理がその後の成長期の神経系の発達・成熟に影響をあたえ,その結果,精神機能の異常が発症するというものです。さらに,最近の分子生物学的研究,ニューロイメージング研究,および死後脳研究の進展を背景に,1999年Liebermanらは統合失調症の新しい病態仮説として神経変性仮説を提唱しました。すなわち、統合失調症の疾患過程において神経機能の進行性の消失を伴う神経変性が生じているという仮説です。両仮説ともに,統合失調症の病態における脳の形態学的・構造的異常の問題を重視しています。

一方、脳の構造的変化は,抗精神病薬によっても起こりうることが複数の研究者によって報告されています。松本らは、抗精神病薬の投与によって前頭葉皮質および上部側頭回に体積・形態の変化を認め,それらの効果は定型および非定型抗精神病薬とで異なることを報告しています。これらのことを考え合わせると,定型あるいは非定型抗精神病薬が異なる形で脳神経細胞の生存・死に影響し,そのことがこれらの薬物の治療における陰性症状や認知障害の改善効果の違いにつながっている可能性が推察されます。


周辺耳鳴り

私たちはこれまでの検討で,定型抗精神病薬のハロペリドールが有効血中濃度に近い用量で神経細胞に及ぼす障害性は,主作用であるD2受容体の遮断作用によるD2シグナル伝達の低下,さらにはそれによる栄養因子シグナル系の低下に基づくことを示唆してきました。そして,非定型抗精神病薬の陰性症状・認知障害に対する効果発現は,統合失調症の治療効果の主役であるD2受容体の遮断作用を有しながら,いかにそれによる細胞内の生存シグナル活性低下を抑制できるかという点が非常に重要なのではないかと推測しています。現在,定型・非定型抗精神病薬の臨床効果発現の違いについて,抗精神病薬の神経細胞保護作用・神経幹細胞への作用を軸に精力的に解析を進めています。

Research on Alcoholism

近年,発達期のみならず成熟期の中枢神経系における神経新生の研究が急速に進展し,神経回路網の構築・維持における神経幹細胞の役割,およびその機能異常と精神疾患病態との関連がいっそう注目されてきています。以前より,エタノールが発達期の神経新生に影響を及ぼすことが指摘されてきましたが,一生にわたって続く神経新生現象が報告されて以後,神経幹細胞の機能修飾,あるいは神経幹細胞の移植療法を念頭とした新たな治療戦略を背景に,エタノールの神経幹細胞の増殖・分化機能への影響に関する解析研究が様々に進められてきています。

これまでに我々は,アルコールによる細胞障害性の視点から,アルコール暴露後のcAMPおよびCa2+を介した細胞内情報伝達系の変化とポトーシス誘導活性に着目し,アルコールが神経細胞の可塑性に及ぼす影響について検索をしてきました。

さらに,アルコール依存症患者脳における海馬の萎縮など,長期のエタノール摂取と脳内神経新生異常との関連が議論されてきたことを踏まえ,動物脳より得た神経細胞,および神経幹細胞を用いて,エタノール処置による細胞機能変化を解析するとともに,経静脈的幹細胞移植モデルでの脳内神経幹細胞動態変化の可視化の試みなど,アルコールによる神経回路網の修復・維持機能変化の可能性について検討を進めています。

Other Researches

Functional Analysis of ApoE

アルコール誘発神経細胞障害の機序とapoE機能変化の関連についての解析検討を行っています。


砂漠の熱の注意事項AZ

代表的な痴呆性疾患であるアルツハイマー病において,apoEのepsilon 4の存在が発症の重要な危険因子であることが報告されて以来,apoEの機能変化とアルツハイマー病や他の神経変性疾患の病態機序に関する多くの報告がなされてきました。

ApoEは中枢神経系では主にグリア細胞で産生されて細胞外に放出され,髄液中のリポ蛋白と結合した後,細胞膜の受容体を介して神経細胞内に取り込まれることが知られています。しかしながら、コレステロールの細胞内取り込み機能など,神経細胞の生存・維持の上で重要な役割を担っている因子apoEの機能変化が,細胞の膜脂質などに極めて重大な影響を及ぼすと思われるアルコールによって誘発される神経細胞障害にいかに関わっているかについての知見はほとんど存在しません。私たちは,アルコールにより生じる細胞膜脂質の変化が,apoEの機能によっていかなる影響を受け,制御されているかに視点を置き、解析検討を行っています。

これまでに私たちは,培養神経細胞を用いた検討などから,ApoE isoformの中でも,apoE4はアルコールによる神経細胞障害を抑制するという結果を得ております。現在,apoE3はapoE4より神経細胞により保護的に作用し,神経変性疾患の発症や進行においてapoE4の存在がより危険因子となりうるとする報告がほとんどを占めています。しかしながら、ドイツの RiemenshneiderらによってなされたBDNFの遺伝子多型率(C-270T)がアルツハイマー病患者で有意に高く,しかもそのほとんどがapoEのepsion 4 アレルを持たない患者であったとの報告や,apoE4にのみERKの活性化を介した転写因子CREBの活性を増強するとの報告からは,apoEのisoformの違いが生体内で生じさせる細胞機能変化の差異についてはまだ詳細な面からの解析の余地が残っている可能性が推察されます。

特にこれまで私たちは,神経細胞においてアルコールがBDNFやIGF-1といった栄養因子のシグナル伝達系に大きな影響を及ぼすことを報告してきており,ApoE4による細胞内Ca2+流入促進効果が、変異BDNFにおける減弱した生存シグナルを増強させる可能性など,アルコールによって誘発される神経細胞障害とapoE機能変化との関連について,従来の知見にとらわれ過ぎることなく,さらに幅広い視野からの検討が必要であると考えています。

Biological Analysis of Eating Disorder


摂食障害は,DSM-IVによれば神経性無食欲症(anorexia nervosa; AN)と神経性大食症(bulimia nervosa; BN)に分類されます。このうちBNは,制御困難な摂食の欲求に始まり,短時間に大量の食物を強迫的に摂取し,その後自己誘発性嘔吐や下剤の乱用,不食などにより体重増加を防ぐ行動を示し,過食後に無気力感,抑うつ気分を生じる精神疾患です。思春期から青年期の若い女性を中心にみられますが,近年ではより高年齢の女性や男性例も少なからずみられ,我が国においても患者数は増加しています。

摂食障害の薬物治療においては,合併する精神症状として抑うつ症状が最も頻度が高いことなどからも,抗うつ薬が用いられることが多くなっています。抗うつ薬の中でも,SSRIは過食衝動や異常な食行動を減少させることが確認されており,我が国でも摂食障害患者によく投与されています。しかしながら,類似した症状を呈していても,過食衝動や食行動異常に対するSSRIの効果がみられる患者群とみられない患者群が存在することが臨床的に知られており,より効果的な治療法の開発が求められています。これまでの研究で,うつ病患者では血清BDNF値の低下がみられ,抗うつ薬の投与によりこの値が増加することがわかっています。

私たちは,SSRIの過食衝動抑制効果におけるBDNFの役割と治療反応性との関連の検討を始め,私たちが培養細胞実験などで見出した抗うつ薬によって発現変動する因子の血清中での変動を検索するなどして,食行動異常の生物学的基盤の解明とそれに基づく摂食障害の新しい治療法の開発を目指しています。

当教室では上記研究理念と計画のもと,多くの共同研究に支えられ,生物学的病態基盤解明〜新たな治療法の探索を見据えて,活発にな脳科学研究を進めております。

主な共同研究・留学先

研究所 主任
ドイツ ビュルツブルグ大学精神科 Riederer教授
米国 イリノイ州立大学生理学講座 Rasenick教授
米国 コロラド州立大学薬理学教室 Tabakoff教授
フィンランド 国立衛生研究所アルコールセンター Kiianmaa教授
ドイツ ゲッチンゲン大学精神科 Kornhuber博士
ドイツ フランクフルト大学精神科 Froelich博士
イスラエル ベルシェバ大学精神科 Belmaker教授

以上、ラボチーフ 鵜飼 渉 (講師) 記



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